株式公開に向けて本格的な段階に進み、公開準備室は大忙し。
創業者である奥田社長は会長職へと退き、
上場させるために作った新しい会社
ビジョンワークス株式会社の社長になりました。
そして、上場に向け、あらゆる社内業務を軌道修正。
ところがある日、痛烈に感じた組織のひずみ。
今が、自分が創業時に目指した
「社員が楽しいと思える会社」と言えるだろうか。
自分がこの会社を経営しているのは、なぜなのか。
その思いが募り、奥田社長は、
上場計画の中止を決断しました。
残ったのは、上場準備に奔走した経営陣と社員との
意識の差、情報の差、その温度差。
それは、社員からの信頼を失いかけた会社の実情に
他なりませんでした。
- ―
- 社長と管理職のみなさまとで合宿をされて、
そろそろ半年です。
以前との変化を感じることってありますか?
- 奥田
- 話をしているときの感触ですかね。
前は、僕が話すと一方通行的な感じだったのが、
今は、話の背景にあるものを知ってくれてるから、
理解しようという気持ちで聞いてくれるというか。
イメージなんですけど、具体的に言うと・・・
- ―
- 上からの言葉がおりてきたというか、
通達です、以上!という感じではなくなった。
- 奥田
- そうですね。同じ船に乗っていることを、
社員がわかって、船長の話を聞いてくれるんです。
- ―
- 社長という存在が、実体になったんですね。
- 奥田
- そうそう。実際のところ社員には、
要するに何が社長の仕事なんだっていうのが、
なかなか見えないんですよ。
それが、あの合宿をしたことで少し見えた。
社員から見えるようになったかなって。

- ―
- 合宿で、社長の苦労話や上場計画中止の裏側を
お話されましたよね。そこは前々から、
話さなきゃって思われていたんですか?
- 奥田
- いや、思ってない。思ってないというか、
もう前に話してたし、社歴をまとめた本もあるし、
歴史とかその背景を知らないなんて、思ってなかった。
- ―
- 手に入れようと思えば、そこに情報はあるから。
しかも社長は、話さないようにしていたわけじゃない。
- 奥田
- ないない。話しすぎてると思ってたくらい。なのに、
前に話したことをまた話すのってイヤでしょう?
社長年とって、また同じ話してるよ、みたいなの(笑)
- ―
- 自分は話したことを覚えているんですもんね。
しかも、ご自身の苦労話をされるわけで。
自分の苦労話を社員に聞かせたい社長はいない。
- 奥田
- そこなんだよね。自分の苦労話を、
わざわざ社員にしたい社長なんていないでしょ。
オレはこんなに苦労してきたんだぜ、みたいなことを、
平気で話せるような人は社長にならないだろうし、
ぐっと我慢している部分が、社長にはあるよね。
でも、何かの機会にそれを言わなければならないんだ、
ってことは、今回のことでよくわかったかな。
- ―
- 実際のご苦労は、壮絶なものですよね。
そこを社員に話すのは、勇気がいりますか。
- 奥田
- いや、その時は大変でしたよ。ストレスがすごいから。
病気したり、痩せちゃったり、気力もなくなってね。
でもそういうのって、
過ぎてしまえばたいした苦労じゃないんだよ。
今が幸せならばね。
だから、そんなに緊迫感ある話し方もできないし。

- ―
- 社長にとっては、過ぎたことだから。
でもそのご苦労やストレスやその結果起きたことが、
今の会社の土台になっていることは、確かで。
- 奥田
- そう。土台だね。
だから、知りたいっていうよりも、
直接聞きたかった、っていうことなのかもしれない。
- ―
- 伝え聞きや文字情報ではなく、
社長の言葉で、社長の表情をみながら、自分の耳で。
- 奥田
- 近い空間で。ひざを突き合わせてね。
- ―
- だから合宿だったんですね。
時間を区切った研修とかではなく、宿泊する。
- 奥田
- そうですね。昼間にやると、業務の合間でしょう?
いろいろ気になるし、「その程度」のことになっちゃう。
僕がどのくらい本気かっていうことを、
わかってもらわなきゃ、話は届かないから。
- ―
- 店舗勤務の方もいて、泊まりの調整は大変ですよね。
管理職のみなさん、ちょっと疑心暗鬼でしたか?
社員の反対。疑心暗鬼どころじゃない。
- 奥田
- ちょっとどころ、疑心暗鬼どころじゃないですよ(笑)
もう、大反対。意味わかんないって。
- ―
- 意味わかんないって(笑)
でも、社長からの招待状を出されて。
- 奥田
- ちゃんと僕のいいたいことを、
ワイキューブさんが文章にしてくれて。
そういうところ、本当にいいと思うよ。
- ―
- ありがとうございます。
社長の言葉で合宿の主旨を伝えれば、少しは。
- 奥田
- そうだね。ああ、なるほどな、ってくらいには。
でも泊まる必要はないんじゃないの?って(笑)
- ―
- いつも会議で集まってお話されているメンバーだし。
- 奥田
- そうなんですよね。月2回の管理職会議があるので。
それでも泊まりでひざを突き合わせる意味があって。
- ―
- 2日間みっちり、討議やグループワークをされて。
社長からのお話は、具体的な方針というよりも…
- 奥田
- 方針というより、意識かな。
社長としての本心とか、これまでの気持ちの動き。
経営理念とか、なぜこの理念になったのかとか。

- ―
- すべての基盤になる部分ですね。
- 奥田
- そうだね。だから、具体的な何かを得た感覚ではなく、
社員は、やったということが記憶に残ったと思う。
現実の記憶が、仕事の支えになってるんじゃないかな。
- ―
- 合宿のはじまりと合宿の終わりとでは、
管理職のみなさまの顔や言葉、変わりましたよね?
- 奥田
- 最初は、なんで社長のこんなのに付き合うの?で、
最後は逆に、社長が自分たちに付き合ってくれた、
っていう感覚に持っていけたよね。
社長の誠意が、社員の心に刺さった。
- ―
- 心に刺さった。
社長の熱意というか、それは誠意ですよね。
- 奥田
- そう感じてくれてたら嬉しいね。スタートだから。
定期的にやらないとダメですよね、あの合宿は。
- ―
- 定期開催になると、次回のテーマはなんだろうって、
考える癖もできますね。
- 奥田
- そこを目指したいですね。
社員が理念とかビジョンの意味を考えるようになる。
- ―
- 理念の言葉を知っているのと、
その意味を考えたことがあるのとでは、かなり違う。
- 奥田
- 考える機会をつくるのは、僕の、社長の仕事です。
そのスタートを切れたことが、僕は嬉しいですね。

- ―
- そもそも合宿をされたきっかけ、
社員のみなさまと社長ご自身との意識や、
見ているところのギャップを知ったのは、
組織求心力サーベイの結果がでたとき。
- 奥田
- そうそう。あのサーベイをやらなかったら、
しなかったでしょうね。合宿も、他のいろんな改善も。
- ―
- サーベイの結果を見て、ショックでしたか?
- 奥田
- いや、ショックではなかったけど、結果を見ると、
自分と社員との間に、あまりにも距離がある。
でも僕は、そんなに距離があるなんて思ってなかった。
何でかっていうと、
社員に対する思いがあるから。
- ―
- 好きなんですよね、社長は社員を、まず。
- 奥田
- そう。スタッフが好きなんですよ。当然ね。
だから、距離なんて感じてないんです。社長側は。
ところが社員から見たら、すごい距離感。
そこのギャップを、サーベイが教えてくれたんですね。
LiCROSS株式会社様/ビジョンワークス株式会社様
今回のゲスト

社名:LiCROSS株式会社/ビジョンワークス株式会社
代表者:代表取締役社長 奥田哲也
事業内容:モバイルソリューション事業、リテール事業
本社:東京都新宿区
従業員数:83名(2008年7月現在・グループ合計)
URL:http://www.visionworks.jp/
