鎌倉対談の後、面白法人カヤック代表取締役・柳澤大輔氏ご講演「『面白法人』と称する企業の経営組織論」セミナーが満員御礼で開催されました。当日、最後の柳澤氏とワイキューブ安田との対談には、セミナーに社員様とともにご来場いただいていた株式会社スタートトゥデイ代表取締役・前澤友作氏にもご登壇いただきました。その様子を特別にお届けします。※ちなみに、当日まったくのアドリブです。
- 安田
- えー、皆さん。「ZOZOREZORT」というサイトはご存じでしょうか。前澤くんはそこのサイトを運営している会社の経営者なんですが、知っている、という方は手を挙げて頂けますか?(※ここで過半数の方が挙手)いやー、すごい知名度ですね。
- 前澤
- ありがとうございます。株式会社スタートトゥデイの前澤と申します。

- 安田
- 実は前澤くんとは日頃からすごく仲良くさせてもらっていて。うちよりずっと社歴も浅いのに、売上げも負けてしまうし、ゴルフのスコアも負けてしまうし、男前だし。もう何から何まで負けてしまうんで、本当に憎たらしいと思っているんですが。
- 二人
- (笑)
- 安田
- でもなぜか好きになってしまうという非常に魅力的な若手経営者なんです。以前から僕は、カヤックの柳澤さんと並んで、このスタートトゥデイの前澤くんもすごく気になっていまして。今日はせっかくなので、お二人に色々と質問してみたいんです。
- 前澤
- どうぞ、何でも質問して下さい。
- 安田
- 僕は今、44歳なんですが。僕らの世代って「仕事に個人の好き嫌いを持ち込むな」っていう社会的な風潮があったんです。だから社員も、どうも仕事を好きになれないとか、力が出ないというときに「いや、仕事とはそういうものじゃないんだ」という風に上司から叱られたり、自分をを律したりとか。気合を入れて我慢したりしてたんです。
- 前澤
- そうですね。
- 安田
- で、経営者なんて言ったらもう、非常にストイックじゃないといけない。我慢強くないとやれないということを刷り込まれて来てるんですけど。
- 前澤
- そうなんですか?
- 安田
- そうなんですよ。前澤くんは違うけど、中小企業の社長はそういう人が多いんですよ。でも、お二人を見ていると、どうも自分の「好き」を犠牲にしていなかったり、社員の「好き」をすごく仕事に生かそうとしていますよね。
- 前澤
- はい。それは、すごく意識していますね。
- 安田
- なので、そもそも個人の好き嫌いを会社や仕事に持ち込むということについて、どう考えているのかということを聞いてみたいんです。
- 前澤
- すごく単純ですけど,、社員の好きなことを大切にしている理由は成果が上がるからです。好きなことが明確にある人は、それをやるのが一番効率がいいですね。体が勝手に動くし、人が気が付かない所にも気が付くし、自然と成果にもつながりやすい。その結果として、やる気だってついてきますから。
- 安田
- 体が動く…なるほど。好きなことなら意識的に考えなくても既にやっているということですよね。
- 前澤
- そうです。それが本当に好きってことなんで。だから、社員それぞれの「好きの要素」を僕が見つけて、皆が仕事を好きでいる環境を保つというのが経営者の仕事の1つかなと思ってやっています。

- 安田
- それって、どうですか?ちゃんと上手くいってます?
- 前澤
- 今の所はうまく言ってます。というのも、うちは洋服をインターネットで売る仕事をしてるんですが、元々うちのお客様だった方を採用しているので。今もお客様なので、社員でありかつお客様でもある(笑)嬉しいことに、社員募集にお客様が応募して来て下さるんですよね
- 安田
- あ、なるほど。
- 前澤
- ということは当然ですけど、基本的に、洋服が好きな人たちなんですよ。
- 安田
- それって理想的じゃないですか。お客様がファンとしてひきつけられて、仲間になりたがるということですよね。採用媒体に頼らないで済むから、採用費も広告費も無駄にかからない。
- 前澤
- そうですね。まあ、それが目的じゃないんですけど。
- 安田
- では、柳澤さんは、そのあたりをどう考えていますか?
- 柳澤
- カヤックでも、基本的にはスタートトゥデイさんと考え方は一緒ですね。好きなことをやるのが一番、効率的だと思います。
- 安田
- カヤックでは「何かをつくるのが好き」っていうことになると思うんですけど、社員の好き嫌いや向き不向きの判断をどうやってするんですか。
- 柳澤
- まず、人として好きな事と仕事として好きな事って違っている場合もあって。仕事には求められるレベルというのがあるのでそこはきちんと判断しますよ。
- 安田
- それは、そうですよね。
- 柳澤
- 大好きだけど向いてないっていう場合もあるし、好きで向いてるけど、今はまだレベルが高くないっていう場合もあるので。そこは調整次第です。
- 安田
- 本人には、どう伝えるんですか?
- 柳澤
- いや、普通にサラッと伝えますよ(笑)もし、本人のレベルがまだ高くないことで、周りのメンバーが気持ちよく動けていない場合とか。そのまま伝えてます。
- 安田
- カヤックさんも、そこは、きちんとしてるんですね。
- 柳澤
- はい。ただ、そう言われても全然めげることはないと思いますけど。
- 安田
- では、会社の事業や商品・サービスに対する「好き」が大前提で、能力については個々に調整する。前澤くんが言ってたように、それをなるべく最適な形になるよう考えるのが経営者の仕事ということですよね。
- 二人
- そうですね。

- 安田
- 「ブランド」という言葉はこれまで「高級なもの」「有名なもの」というイメージで使われてきましたが、そもそも間違った解釈ですね。"brand"という言葉の語源は、家畜を識別するための“焼き印”なので、他と区別が付くとか個性的であるということのはずで。
- 前澤
- きっと昔は、高級品を皆が持っていなかったからですよね。
- 安田
- そうか、なるほど、そうですね。今は、ヴィトンでもグッチでも誰でも持ってますからね。そういう意味では、ようやくブランドという言葉の本当の意味が問われる時代なのかなと。

- 前澤
- 洋服のトレンドを見ていても、最近はすごく多様化していますからね。
- 安田
- でも、それって会社も同じだと思うんですよ。最近は小さくても、有名じゃなくても、歴史が浅くても、なぜか人が集まってくる会社ってのが少しずつ増えてると思うんですね。で、そういう会社って、人をひきつける引力みたいなものがあって、オフィスは結構遠くにあったりするんですよ。現に、カヤックもスタートトゥデイも東京から遠いじゃないですか。
- 前澤
- うちは幕張ですからね(笑)
- 安田
- 前澤くんとか、ちょっと一緒に飲もうと思って電話すると「幕張に来ませんか」って無茶なことを言う(笑)でも、都内で新卒の説明会とかやると、すごく人が集まるでしょ?
- 前澤
- 先日、国際フォーラムで説明会をさせて頂いて。3500人でした。
- 安田
- 3500人て、すごいですよね。私も20年間、採用の仕事してますけど、何が難しいって、やっぱり通勤距離があると難しいんですよ。職場が遠いと、同じ条件であれば他社に流れてしまう。それなのに、会社が遠方でもわんさか応募が来るっていうのは採用ブランドを持っている証拠だと思うんですね。ただ、採用だけじゃなくて、今いる社員とも、お客様とも、距離を越えた関係性を作っている。その会社が人をひきつける源泉になっているものは一体何なのかと。カヤックさんの場合は何なんでしょうね。
- 柳澤
- 先日も安田さんとさんと話してましたが、うちは鎌倉に本社があるってことがマイナスイメージじゃなくて、プラスのイメージになっていますよね。鎌倉にWEB系の会社があるよってだけで珍しいので。それってブランドに関係してくるはずですから。
- 安田
- ユニークさが、ブランドの本質だってことですよね。
- 柳澤
- そうです。だから、鎌倉の方がいいっていう価値観に響いた人にとっては、通勤しづらいって思わないはずです。むしろ、いいじゃん、鎌倉に住もうってことになる。

- 安田
- なるほど。そうですね。一方、スタートトゥデイでは何を大切にしてるんですか?
- 前澤
- それは言葉ですね。具体的に言うと経営理念です。カヤックさんの経営理念は「つくる人をふやす。」ですよね?ワイキューブさんの経営理念は「ぐっとくる会社を、もっと。」じゃあ、スタートトゥデイは何をするのか?何のためにするのか?うちもそれを非常に大切にしています。
- 安田
- 何でしたっけ?スタートトゥデイの経営理念。
- 前澤
- 「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」です。スタートトゥデイは、それが最大の存在理由ですし、そのために人が集まって事業活動をやっているんです。その結果、単純に便利だから使って下さっているお客様もいますが、中には経営理念に共感してくれた人がいたり、社員になってくれたりしています。
- 安田
- それは、自社の価値観を、社会に対して表明しているから起こることですよね。昔、前澤くんの取材に行きまして、彼はセンスがいいと思っていたので、「センスがいい人と悪い人が、世の中にいるじゃないですか。それについてどう思いますか」って聞いたら「センスが良いとか悪いとか言っている、それ自体センスが悪いですね、安田さん」って言われまして。
- 前澤
- あ、言いましたね。たしか(笑)
- 安田
- でも、なるほどと思いましたよ。先日、うちの女性社員が携帯ストラップに変な人形を付けていて。なんでこんなの買うのって聞いたら「だって、なんかカワイイじゃないですか」って言うんですよ。「なんかカワイイ」と、それで十分だと言うんですね。
- 前澤
- 十分ですね。その子がそう感じたなら。
- 安田
- 話をよく聞いてみると「なんかカワイイ」ってのは女の子の購買動機として最高のものらしくて。でも僕は、それにあたる「なんか○○」という言葉を持っていなかったなと。それで、前澤くんにそれを話したら「なんかカッコいいでいいじゃないですか」って言ったんですよ。
- 前澤
- 言いましたねー(笑)
- 安田
- あれは、衝撃でしたね。何がセンスが良いのか、悪いのか。あの頃、僕がそんなことばっかり考えていたのは、自分に自信がなかったからなのかもしれないなと。前澤くんは、自分が「なんかカッコイイ」それで十分なんだというのは、それって自分の感性に自信があるってことなんですよ。
- 前澤
- 最近は皆そうですよ。自分の感性で「なんかカワイイ」「なんかカッコイイ」と感じるのであれば、それを周りが買ってるとか、あまり関係ないと思いますね。
- 安田
- 先ほど、お二人とも一番大事なのは経営理念だと仰っていましたね。でも理念って、やっぱり「何かをする」って決めることでもありますが、それと同時に「これはやらないぞ」と決めることでもあると思うんです。どんなに儲かっても、どんなに金を積まれても「これはやらない」とあらかじめ決めていることって何かありますか?
- 前澤
- んーと。戦争はしない。

- 安田
- デカイですね(笑)
- 前澤
- いや、でも経済的な成長のためにも、そういうイメージは必要なんですよ。それが無いまま行ってしまうと、何のために成長するのかとか、どこまで会社を成長させるのか、限界ってどこなのか、限界が来たらどうするか。その場面になった時にブレてしまうんで。
- 安田
- そうですね。
- 前澤
- 以前、カヤックには、3年後のカヤックを想像する会があると柳澤さんが仰っていたんですけど、スタートトゥデイには実は100年後を想像する会があって。100年もすれば自分も死んでいるし、もしかしたら自分の孫の代も死んでいたり、よく分からないんですけれど、そういうところまで想像してやっていこうと。その中で、戦争というキーワードも上がってきていて、それを避ける方法を真剣に考えていますね。
- 安田
- 戦争って、企業間競争もですよね?
- 前澤
- そうですね、すごく近いと思います。だから、カヤックさんのように、ユニークさを大事にする経営って大事だと思いますね。会社同士がそれを認め合って向上していく。そういう時代にしていかないと、全体がダメになってしまうかなと。
- 安田
- そもそも、違うものを同じようにしようとするから戦争って起こると思うんですよ。人種だって、宗教だって、商売だってそうで。でも逆に、似た者同士が「おまえとは違うんだ」ってことを必死になって主張して戦争になったりもするんで。でも、前澤くんは、やっぱり多様化した方がいいと考えているんですよね?
- 前澤
- そうですね。
- 安田
- 柳澤さんは、何をしないと決めてますか?
- 柳澤
- カヤックの場合は、そうですね、、、基本的にそういうのはないですけど、あるとすれば笑顔がなくなることはやらないですかね。ちょっとそういう、漠然とした言い方しかできませんけど。基本的には時代が変わると価値観も変わるので。今はこれをやりたくないけど、考え方を変えたら、やりたいという人がいるかもしれない。ただ、会社として笑顔がなくなっちゃったら、会社を解散しようと決めているので。そこだけは。

- 安田
- 笑顔が全然なくなっちゃったら、僕も会社を解散するかもしれないですね。ただ、僕はこれからの世の中について結構、楽観視しています。なぜなら、何か明らかに社会が、会社が、変わってきているんですね。経営者も、求められる経営者像が変化してきている。好き嫌いを仕事につなげて生きていけるし、逆にそうしないと生き残れない時代が来たのかなと思います。きっとそうやって、自社の好き嫌いを突き詰めた会社がいっぱい出てくると思うんですよ。そして彼らが世の中を変えていくんじゃないかなと思うんですね。ぜひ、そういう面白い会社を、一緒に増やしていきたいと思っています。お二人とも、本日は、本当にどうもありがとうございました。
- 二人
- ありがとうございました。

