ワイキューブ|特集企画・レポート|【銀座対談】 今田洋輔 × 安田佳生

【銀座対談】 今田洋輔 × 安田佳生



↓今回は、こちらにお邪魔しました。


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創業74年の老舗として、日本の寿司文化をリードしてきた「銀座久兵衛」。
あの軍艦巻きを初めて開発した寿司屋でもあり、創業以来、北大路魯山人や志賀直哉など、食通と呼ばれた財界人・文化人のみならず、庶民からも広く愛され続けています。今回、新たなチャレンジとして新卒採用を実施し、共に未来をつくる仲間を募集中。職人志望の学生が増える世情を見据えつつ、店主の今田洋輔氏にワイキューブ代表の安田佳生がお話を伺います。
 

  
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※JAPAN GUIDE SERIES 1 "SUSHI 寿司" Sushi Menu & Our Recommended Sushi Restaurants in TokyoのRestaurant List 〔Einglish Ver.〕にも、「GINZA KYUBEY」としてトップに掲載されています。
  
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安田
こんにちは。今日は銀座のお店までやってきてしまいました。
今田
ようこそ。お待ちしてました。
安田
今日はすみません。お忙しいのに。
今田
とんでもない。こちらこそ。
安田
先日、うちのお客さんに久兵衛さんが新卒採用をやってるって伝えたら、驚いてましたよ。
今田
まだまだ寿司屋で大卒を採用するってのは珍しいんでしょうかね。「大学まで出て、何で寿司職人なのか?」ってなりますものね。
安田
きっと、学生本人よりも、親御さんの方が時代の変化に追い付いてないでしょうね。
今田
でも、大学を出て中途でうちの門を叩いて入ってきてる人は、これまでも何人かいるんですけどね。
安田
そうですよね。世の中的にも職人になりたいって子は確実に増えてますよ。うちのお客さんだと、大工さんも学生から人気ですしね。
今田
えっ?あ、そうなんですか。なかなか想像つかんですけどね。
安田
やっぱり大企業に入っても将来どうなるか分からない世の中になってきてますし。手に職を付けたいっていう意識はあって。
今田
「手に職」ですか。まあ、そういう意味では、私どもはその名の通り「手」に技術を叩き込んでいきますからね。それもかなり長い時間をかけて。

 

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安田
手に職を付けたいっていう意味が、単なる防衛意識じゃなくて。きっと生き方とか人としての在り方みたいなレベルで共感する学生が増えてると思うんですよね。
今田
ってことは、あれですか。「職業」というより「職人という生き方」を選んでいるってことですか。
安田
はい。そう感じますね。そういえば、久兵衛さんが新卒採用を始めた理由って何だったんですか?そもそも。
今田
いや、実はそんなに大した意図はないんですけどね。間口を広げたかっただけで。
安田
そうなんですか?それは意外ですね(笑)色々と、戦略的に考えていらっしゃるのかと思っていましたよ。
今田
いやいや。まったく(笑)だって大学を出たからって寿司職人になっちゃいけない理由って、別にないじゃないですか。
安田
それはたしかに。
今田
でしょう?
安田
でも、そこはやっぱり職人の世界ですから。高校とか調理師学校を卒業して若いうちに入った方が絶対的に有利なんじゃないんですか?こういう世界は。
今田
そりゃあ、早い段階で始めるに越したことはないです。ただ、見ているとあんまり関係ないですけどね。覚えが速い子は自分で勉強しますし、ちゃっちゃと育っていきますから。
安田
じゃあ、実力次第で追いつけるんですね。
今田
基本的な年功序列はベースにありますけど、実力が伴えば全然追いつけますよ。大卒だっていうことで、特別視したりしないということです。良くも悪くも。
  
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安田
ちなみに、高卒/大卒っていう区分け以上に男女の差ってやっぱりあるんですか?
今田
女性はあんまり見かけないですね、この世界は。僕は別に、女性の寿司職人がいてもいいと思うんですけど。
安田
でも「女性は手が温かくて、ネタが温まっちまう」なんて言われてるじゃないですか。
今田
あー、でも、あれは嘘っぱちですよ。
安田
えっ?そうなんですか?
今田
体温なんて、人によりけりですから。男女関係なく、個人差ですね。それに、僕らは握っている時は常に水に触れてますから。
安田
あ、言われてみれば、そうですよね。
今田
それに、寿司職人は手さばきが命なんですよ。パッパと握ってお出しするので、ネタに触れている時間なんて僅かなものです。手早く、力みなく、無駄な動きをしないようにする。
安田
なるほど。
今田
でも、そこまで行くのには、本当に時間がかかりますけどね。メインで握るのに7、8年はかけてますから。うちの場合は。
安田
やっぱり、そのくらいかかるものですか。技術を身に付けるには。
今田
そうですね。まぁ、もっと早い段階で握らせてくれるお店はあると思いますし、形だけそれっぽく握るだけなら練習すればできるんでしょうけど。僕は、待つのも含めて仕事だと思ってるんで。裏で地道に握る練習をし続けるわけです。
安田
待つことで、蓄積されていくものもありますか。
今田
はい。それって要するに、安定感なんですよ。同じ動きを繰り返し繰り返し体に叩き込まないと、いざっていう時に精度の高い再現ができないですから。実際、結構なベテランでも、僕がちょっと目の前で握ってみてって言うと震えてますからね。

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安田
それは…震えるでしょうね(笑)
今田
まあ、緊張するんでしょうね。もうね、すごいんです。握ってから香り付けにスダチを一滴垂らす時があるんですけど、震えちゃってうまくかけられないとか。
安田
でも、例えば寿司屋で育った息子が入社してきて、昔から家業を手伝わされていたもんだから成長が速い、なんててことは今までなかったですか?
今田
んー。いやー案外ね、寿司屋の息子って何もやってなかったりしますね。
安田
それは(笑)
今田
仮に、すごく腕が良ければ、宴会場への出張の時に握らせるかもしれないですけどね。ただ、組織の中での掟はあるので。
安田
やっぱり、序列や鉄則というか、そういうものがあるんですね。
今田
そうですね。必要なものだと思いますし。
安田
でも、技術の部分以外に味覚のセンスってないですか?
今田
あ、それはやっぱりあります。
安田
小さい頃から、繊細な味に慣らされているかどうかって大事じゃないですか。
今田
そうですね。でも、ある程度は、味覚も鍛えられるんですけどね。外人の方とかでも、食べ慣れない白身魚の刺身の繊細な風味がわかるようになっていったりするので。
安田
本当ですか?いやー、信じられないな。
今田
単に味わい方を知らなかっただけ、という場合もあるんでね。安田さんも、昔は嫌いだったけど、今では好きになったものとかあるでしょ。
安田
それはありますね、確かに。
今田
味覚も育つんですよね。だから、致命的な味オンチということでなければ訓練次第ですよ。
  
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安田
そうすると寿司職人に向いてない人ってのはいないんでしょうか。
今田
うまい寿司を握る技術だけで言えば、時間をかければ確実に身に付くと思いますね。
安田
技術というのは・・・握る技術だけじゃないですよね。
今田
そうですね。道具の使い方とかね。
安田
どういう角度で、どういうスピードで包丁を引くか、とか。例えば、身を押し切るようにすると舌触りが悪くなるって言うじゃないですか。
今田
そうですね。身の細胞の断面が汚くなっちゃうので、歯ざわりが悪くなりますからね。
安田
なるほど。
今田
あと、筋に沿って切っちゃダメで。筋を切るように包丁を入れないといけない。そういう知識はそれこそ膨大にありますからね。
安田
でも、それは知識であって、知っていれば出来るものなんですか?
今田
まあ、比較的そうですね。ただ、知っていたとしてもまったく同じ状況ってのはね無いんですよ。同じバチマグロって言っても昨日のそれとは別なわけで。それに、尻尾と頭じゃ厚さも身の硬さも違いますから。その時その時の現場で手で素材に触れて、体に覚えこませるしかない。
安田
朝の市場での仕入れの時とかも、そういうのってあるんじゃないですか?
今田
そうですね。このシマアジは買いだぞとか、この魚は美味しそうに見えるけど・・・
安田
旬じゃないとか。

 

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今田
そうそう。そういう目利きの技術というのはあります。あと鮮度とか。
安田
具体的には、どういう風に見るんですか?
今田
うーん。例えば、カツオとかって案外、難しいんですよ。張りがあって産地がよくても、さばいてみたら色が飛んでたり。包丁を入れると・・・身がなんていうかね・・・毛羽立つ感じというか。まあ、こればっかりは口で説明するのは難しいんですけどね。
安田
でも、そこまでは知識として習得可能で、練習を積めば身に付くんですか?
今田
そうですね。知識体系はご先祖様が築き上げてくれたものなので、口頭で伝えられるものなんです。だから、本人に興味や意欲があれば、吸収できますね。
安田
でも、ここが僕、すごい興味ある部分なんですけど、寿司職人にも「接客」のスキルが求められるじゃないですか。久兵衛さんのように、お客さんに直接担当が付くような、しっかりした形であればなおさら。
今田
そうですね。そこはやっぱり求められますね。
安田
新卒採用で、コミュニケーションに長けている人を採用することで、久兵衛としての新しい展開が見えてくるかもしれないですね。
今田
でしょうね。結局、お客さんに満たされた気持ちで帰って頂けてるのかどうか。そこに興味が持てないといけないし、もう一度お店に来て頂くためにも必要なことですから。職人は、寿司にまつわる技術と一緒に、人と人との関係づくりの能力も高めていかないといけない。
安田
それって、やっぱり想像力じゃないですか?こうされたら、こういう気持ちになるだろうとイメージしたり、予想できる能力というか。
今田
はい。本当にそう思いますね。職人はどうしても、寿司は握れても気が利かないってなりがちですから。
安田
あと、寿司職人として技術を高めたり、接客技術を磨いたりする以上に、店舗経営の経験を積みたいとか、経営にもっと深く携わりたいという人もいるでしょうね。
今田
そういうのも期待したいですね。店の切り盛り自体に興味を持つような。
安田
絶対に、そういう人材が出てきますよ。
今田
職人は基本的に独立志向なんですけど、経営のリスクを一緒に背負えるようなたくましい人材が増えたら残って欲しいですし、僕としても心強いですからね。
安田
そういう人材、僕も欲しいですね。

(次回、後編では、銀座久兵衛の独特な経営観について切り込みます。お楽しみに!)