↓今回は、新横浜のオフィスにお邪魔してきました。

オフィスのロビーには個性的なゾウと・・・

キリンの置物が。未来感あるデザインオフィスとの取り合わせがオシャレです。
- 中川
- 今日は笠原社長、お時間いただきありがとうございます。
- 笠原
- いえいえ、こちらこそ。今日はよろしくお願いします。
- 中川
- 年明けに、ワイキューブが主催した経営者向けの中国視察ツアーにご参加頂きましたよね。
- 笠原
- はい。おかげさまで。すごく有意義な旅でしたね。
- 中川
- でも、あれって中国慣れしてない経営者向けに作ったツアーだったので、これまで何度も中国に行かれている笠原社長が、どうして参加されたのかなって。
- 笠原
- いや、中国とは言っても上海は初めてでしたから。一度、見てみたかったんですよ。
- 中川
- あ、そうだったんですか。
- 笠原
- 特にあの、民宅訪問。一般のご家庭にお邪魔して。暮らしぶりだったり、何を買ったのか、なぜ買ったのかって質問が出来たりして、ものすごく良かったですよ。
- 中川
- ありがとうございます。参加された方の満足度も高かったですしね。
- 笠原
- ビジネスと関わりのない人たちの話が直接聞ける機会って、そうはありませんから。
- 中川
- 確かに。利害関係がある人と話していると、「それホンマかいな?」って怪しいときありますからね。

- 笠原
- いや、本当にそうですよ。常に情報は歪んでますから。バイアスがかかってます。
- 中川
- 上海の、あれは中流のすこし上のご家庭かな?比較的、裕福な御宅にお邪魔して。
- 笠原
- 本当に、日本の家電製品が置いてありましたよね。
- 中川
- はい(笑)
- 笠原
- オーディオ機器や映像機器はやっぱり日本の製品を使ってましたよね。一方、白物家電と呼ばれているような分野は、中国の家電メーカーが相当強く入り込んでいて。
- 中川
- あれって、やっぱり性能が良いからなんですかね?
- 笠原
- いや、もちろんそれもあるでしょうけど、それだけが理由じゃないと思うな。
- 中川
- どういうことですか?
- 笠原
- オーディオ機器って、彼らにとって日常生活品じゃないんですよ、きっと。
- 中川
- 贅沢品とか、嗜好品?
- 笠原
- そう。今回行ってみて改めてわかりましたけど、彼らって日常生活には驚くほどお金かけないですよね。
- 中川
- たしかに。比較的裕福なご家庭でもそうなんだーってビックリしましたけどね。
- 笠原
- そう。でもその代わり、趣味や嗜好で買うものにはお金をかけるかける。車とか洋服とかもそう。見栄をしっかりはるというか。
- 中川
- すごくメリハリ効いてますよね。お金の使い方として。
- 笠原
- そう。ある意味で合理的ですよね。テレビも大きかったなー。日本でよく売れてる小さいテレビとか、あっちだとあまり売れないらしいですからね。
- 中川
- やっぱり、日本と比べて格差が開いてますよね。同じ上海でも、郊外と都心で価格の差がものすごいことになってる。
- 笠原
- 日本だと、一杯100円の缶コーヒーが、高級ホテルのラウンジで飲むコーヒーだと1000円程度ですけど。
- 中川
- その差、10倍。
- 笠原
- そう、日本では10倍がせいぜいですよね。でも、上海はその価格差がこーんな。100倍はありますからね(笑)

- 中川
- あれは、あまりに価格差が激しすぎて、ちょっと笑えてきますよ。
- 笠原
- そういう意味では、上海はいまの中国の縮図ですよね。ものすごく洗練された都会ですけど、車で1時間ほど行くと…。
- 中川
- ゴミが散乱してますしね。
- 笠原
- してました(笑)あれはすごい光景ですよね。上海の人口って今3,000万人くらいいるらしいですけど、3,000万人って言ったら、ちょっとした国に匹敵しますから。
- 中川
- でも、2002年の時点では1,700万人程度だったんでしょ?ここ8年で人口2倍ですよ。
- 笠原
- 人口2倍で物価100倍…恐るべき成長ですよね。でも、だからこそ参入する意味があるんですよね。
- 中川
- でも、製品が違法コピーされてしまうかもしれないって恐くありませんか?コアとなる技術が盗まれたり。中国では、そこがネックになって二の足を踏んでる日本の企業は多いと思うんですが。
- 笠原
- いやー、うちの商品(コンタクトプローブ)に限って言えば、あんな細かい仕事、中国の人はなかなかやりたがりませんし、将来的にそうなるとも思えません。

↑ これがコンタクトプローブ。写真はサンケイエンジニアリング社のHPから引用。
- 中川
- そうですか?
- 笠原
- やっぱり、そこは日本人の強みでもあります。とにかく細かいし、細かいのが好き。
- 中川
- そうですか。僕は割と、大雑把な方なんですけどね。
- 笠原
- だって中川さん、うちの商品のサイズって、1000分の1ミリとか、そういう領域ですからね。
- 中川
- それって、肉眼では見えない…ですよね。
- 笠原
- はい。当然見えません。品物の良し悪しを見分けるのに、100倍くらいにして見ないとわからないんですよ。
- 中川
- 100倍…って。
- 笠原
- これがうちの商品ですけど、見てみます?このルーペを使って下さい。
- 中川
- ・・・。

- 笠原
- どうですか?これで10倍かな。
- 中川
- ・・・・・・ものすごい細かい世界ですね。ある意味、なんでここまでやるのかって言うくらいすごい。
- 笠原
- いや、ホント。そこに何の意味があるのかって聞かれると、社長の僕ですら上手く答えられないわけ(笑)
- 中川
- でも、だからこそ、価値が出るわけですもんね。
- 笠原
- そう。ここまで精度の高い微細加工技術は現段階では日本でしか求められてません。でも、いずれ中国でも、その他の国でも、ニーズが厚くなってくることは、もうわかっているので。
- 中川
- そういう、現段階のものを、特許を保持しながら海外マーケットに広めていく一方、更なる技術革新というのも進んでいるんでしょうか?
- 笠原
- 同業他社から言わせると、コンタクトプローブの業界って成熟産業らしいんですよ。根本的にね、商品の形はもうこれ以上変わらないだろうし、変えようがないと。
- 中川
- 変わらないんですか?
- 笠原
- 形という意味では、そうかもしれませんね。
- 中川
- でも、サンケイエンジニアリングとしては、技術革新ができないとは考えてない。
- 笠原
- うん。考えてないですね。むしろ、ハイエンドなモデルについては、これからますます微細加工が難しい分野に入っていきますし、ローエンドなものについても、ちょっと手を加えるだけで性能がアップする、というか既にアップさせてますしね。
- 中川
- 例えば、どういった点で性能がアップしているんですか?
- 笠原
- 一つは耐久性ですね。他社製だと10万回検査すると交換しなければならないんですが、うちのは100万回もちますからね。

- 中川
- 別の価値を、加えてるんですね。
- 笠原
- そうです。中国で恐ろしいのが、最もローエンドなものを安価な人件費で大量に生産して、超低価格で売るというやり方です。うちも、そこで勝負をしようとしたらきっと負けます。だから、中国でマネができない、あるいは中国の人がマネしたくない領域で価値を作るということです。
- 中川
- なるほど。じゃあ、笠原社長から見たら、コンタクトプローブに求められていることって、まだまだ沢山あるんですね。
- 笠原
- ええ。あっちこっち、世界中、スキマだらけですよ。
- 中川
- そういえば、そもそも、サンケイエンジニアリングさんが中国採用を始めた理由って何なんですか?理由を一度お聞きしたかったんですよね。
- 笠原
- いずれは中国進出しようと考えていたんですよ。
- 中川
- あ、やっぱり。でも確か、だいぶ前から世界進出しているんですよね?
- 笠原
- はい。マレーシアと、韓国と、ドイツと、ハンガリーかな。でもまあ、代理店を通して販売しているので、その問題点も、ちょうど見えてきた頃だったんですよね。
- 中川
- なるほど。中国以外の市場では、すでに海外との取引は広がっていたんですね。
- 笠原
- はい。もともと製造業そのものが、だいぶ前からグローバル産業なわけで。だから、会社として必要なのは攻めの姿勢。しかも世界に対して攻めていかなければならないという状況なわけです。
- 中川
- 守る人材よりも、攻める人材が欲しいということですか。

- 笠原
- そうです。そういう意味では、中国の学生はしっかり自己主張するので、会社として受け入れる覚悟があれば、すごく有用な人材になりますよ。逆に、日本の新卒採用を続ければ続けるほど、外に攻めていきたいっていう学生を見つけるのは本当に難しいんだなって痛感しました。
- 中川
- 笠原社長、日本の採用でも国籍とか年齢とか問いませんでしたよね。もともと。
- 笠原
- 世の中グローバル、グローバルってこれだけ騒がれてますけど、一方で国籍を問うってのはナンセンスだと、僕は思っていましたからね。
- 中川
- 費用対効果の方はどうですか?
- 笠原
- かなり良いですよ。日本だと1年かけて採るレベルの人材を、中国だと2、3ヶ月で採用できてしまうスピード感もいいです。
- 中川
- 正直、御社の求めるの人材レベルって、かなり高い方だと思いますから。さすがに日本だと難しくなって来てますよね。
- 笠原
- ええ。ここ数年はそうですね。それでも最初は新卒採用の経験すらなくて。ワイキューブさんと付き合い出してからどんどん優秀な人材を獲得できるようになったのは、これは事実ですよ。
- 中川
- ありがとうございます。
- 笠原
- 今でも覚えてるんだけど、最初にうちを担当してくれたのはワイキューブの佐藤さん…だったかな?彼いわく「学生さんを集めるだけなら集められます」って。
- 中川
- それは・・・強気ですね(笑)
- 笠原
- 「社長、来年、人を採りたいんだったら今年からもうやった方がいいです。でも、初年度は採れるとは思わないで下さい。採れたらラッキーです」って。
- 中川
- まずは学生さんのことを知るため、ですよね。
- 笠原
- そうそう。でも、本当に新卒採用はやって良かった。
- 中川
- 一方、中国採用は始めて3年目で、採用したのは男性が2人でしたよね?
- 笠原
- そうそう。そうです。
- 中川
- 大学は、どこでしたっけ?
- 笠原
- えーと、1人が北京大学大学院と日本の東大の大学院を同時に卒業する子で、もう1人は中国石油大学の大学院かな。

※(左)張 弘遠(チョウ コウエン) 君、(右)趙 翔(チョウ ショウ)君 一緒に記念撮影。
- 中川
- 1年目と2年目の中国採用はどうだったんですか?
- 笠原
- いや、正確に言いますと、1年目の北京採用では1名採用しましたが、入社して8ヶ月で辞めてしまいました。
- 中川
- あ、そうか。そうでしたね。
- 笠原
- でも、この1年目の中国採用が、今から考えると大きな経験になっています。結果的には失敗でしたが、採用の仕方や受け入れ方について、真剣に考えるようになりましたからね。
- 中川
- では、その経験を踏まえて2年目はどうだったんでしょうか。
- 笠原
- 2年目も採れなかった・・・。いや、ちがうな、採らなかったんです。
- 中川
- 採らなかった・・・。
- 笠原
- 中国採用の1年目も2年目も、実はうちの人事に任せていたんですよね。僕は現地に行ってなくて。やっぱり中国の学生は自己主張が強いですし、会社サイドとしてそれを受け止められるかっていう確信が、あの当時は持ててなかったんですよね。
- 中川
- 笠原社長、ご自身が?
- 笠原
- そう。彼らと向き合って、切磋琢磨するっていう覚悟がなかった。だから、人事に採用を躊躇させてしまっていた。でも今回、3年目で自信を持って採用できた大きな理由は、これまでの経験を通じて、どういう学生を採用すべきか、入社後にどうやって受け入れて育成していくか、ある程度の確信を、自分として持てたことが大きいんです。
- 中川
- その、確信を持つには、どうしたらいいんですかね?
- 笠原
- 自分で行って見てみるしかないです(笑)

- 中川
- やっぱり(笑)
- 笠原
- うちの場合、2年目の中国採用で「日本で採用できるレベル以上の学生が、中国で確実に採れると思います。ただし、毒になるか薬になるかは、会社の姿勢次第だと思います」って人事が報告をくれていて。「これは実際に現地に行ってみないとな」って。それで、実際に彼らと会って、ようやく僕の中で覚悟と確信が持てた。
- 中川
- 中国採用3年目にして、ようやく自信をもって採用できたと。
- 笠原
- そうです。だからある意味、中国採用の初年度は絶対に失敗するって、確信を持って言えますね(笑)
- 中川
- 彼らの入社動機なんですが、これだけ精密な微細加工技術を持っている御社ですから、独自の技術に魅力を感じて入社してくるんですかね?
- 笠原
- いや、うちの商品はあくまで商売上のいちアイテムであって、中国の学生は、会社や商品に魅力を感じて入社しているわけではないですね。
- 中川
- じゃあ、どこに魅かれて入社するんですか?
- 笠原
- わかりません。
- 中川
- そんなことないでしょ(笑)
- 笠原
- いや、まあ、どこか魅かれる部分はあるみたいですよ。少なくとも、うちの独自技術に関わる海外のフィールドの広さとか、可能性とか。そういうことかなと思いますけどね。
- 中川
- 中国の学生は基本的に、あまり「会社」というものを信用してないですよね。
- 笠原
- してませんねー。確かに。
- 中川
- まさに、就“社”ではなくて、就“職”という意識ですよね。
- 笠原
- でも僕は、就社でも就職でも、どちらの考え方でも良いんだと思いますけどね。
- 中川
- そうですか?
- 笠原
- だって、卒業時点で自分の才能や適性を見極めて“職業”として仕事を選ぶってものすごく難しいことですよ。自分のことを振り返ってみても、就労経験もない状態で適切な職業選択なんて不可能に近いと思いますしね。
- 中川
- それは、確かにそうかもしれませんね。
- 笠原
- それに「良い会社に入って良い給料をもらう」みたいな意識で仮に入社できたとしても、その後、社内の出世競争で淘汰されちゃいますから。

- 中川
- そうですね。そんな甘くないですからね。
- 笠原
- それが現実なんですよ。だから、中国の学生の方がその現実をよくわかってるという、それだけのことなんですよ。
- 中川
- 大人だってことですね。
- 笠原
- そう。世の中どう変わるかわからないし、自分もいつどんな興味が沸いてくるかわからないので、だから逆に職業では選ばない。会社という"場"だったり、活躍できる可能性みたいもので選ぶ学生も意外と多いですよ。中国の学生には。
- 中川
- では、「中国人は個人主義だから、会社を信用してない」というのも…。
- 笠原
- うん。ちょっと違うような気がしてきてますね。あと、中国の学生さんと話をしていると、基本的に「人間、働かないと生きていけないですからね」っていう前提がしっかりある。だから、とにかく働くことが大事なのであって、どの職業を選ぶか、どの会社を選ぶかであんまり悩まない。
- 中川
- それが個人主義的に見えるのかもしれないですね、とにかく彼らは本当に必死ですもんね。「自分は日本に行きたいんだ」っていう熱意がすごいし。
- 笠原
- そうですね。で、「どうせ働くのであれば、より大きなリターンが欲しいし、より大きな成果を出したい」って、明確に言いますからね。僕はそれって、真っ当な考え方だと思うしね。
- 中川
- ちゃんと考えてるんですね。
- 笠原
- いや、中川さん。あれはね、頭で考えて、そう言ってるわけじゃないと思いますよ。
- 中川
- というと?考えてるんじゃなくて、感じてるってことですか?
- 笠原
- はい。だって、中国の学生さんに沢山お会いしましたけど、能力が高いとか学歴が良いとかって全く関係なく、どの学生さんからも一様に感じますからね。そういう姿勢を。
- 中川
- 上昇志向が前提にあるんですかね。
- 笠原
- 上昇志向。あるいは向上心と言ってもいいかな。意外なことに彼らは口を揃えて「中国はまだまだ」だって言うんです。もっと良くしていかないといけないって。

- 中川
- すごく自信過剰で、会社組織に馴染めないような所はありませんか?
- 笠原
- 今はもう大丈夫ですね。向上心と自己主張の強さ。それに見合うだけのプライドと責任感、それが中国の学生の特徴ですから。リスクはもちろんありますけど、彼らの納得させられるビジネスとポジションを提供できるのであれば、逆に日本の人材よりも強力な信頼関係を築くことも可能なんじゃないかって、最近はそう思うんです。
- 中川
- 試されるんでしょうね。経営者も会社も。
- 笠原
- そうでしょうね。でも、逆にそれが良いんだと思います。
企画/取材 : 中川 智尚、三上 富士雄、森山 大朗
クリエイティブディレクション/デザイン/文 : 森山 大朗
写真 : 任 存弘

笠原 久芳(かさはら ひさよし)
株式会社サンケイエンジニアリング 代表取締役社長
生年月日 1963年生まれ
出身地 横浜市
趣味 スキューバダイビング、サーフィン
※年に1度は沖縄の海へ行っている。
座右の銘 「明るく、元気に、へこたれず」
1989年 サンケイエンジニアリング入社
1998年 旧技術センター設立
2002年 代表取締役副社長就任
2004年 代表取締役社長就任
2005年 新製品の開発を着手
2006年 現技術センター新築
2007年 本格的に海外進出を着手





